令和元年一級建築士製図試験 台風による延期! 平成26年度製図問題分析 傾向と対策 その3

一級建築士製図試験に私は4度落ちた。まったく自慢できる話ではないが、それでもこの試験に挑み続けたのは、ただ建築が好きだから。『製図試験』を落ち続けた私は、この製図試験を何が何でも自力で合格したかった。いや、合格したいというよりも、『製図試験』という私をすり減らす『敵』に完全勝利したかったのだと思う。だから、製図試験が独学で受かることを証明したかった。

結果平成26年は、自作問題ををブログやSNSにアップ、先に合格した仲間達とアドバイスをもらったり、情報交換をしながら合格することができた。

製図を独学で合格して分かったのは、ただ学校に通ったり、与えられたカリキュラムに則るよりも、自分で考えながら、自分自身をマネージメントしながら学んだ方が何倍も何十倍も血肉になるということ。もしかしたら最初からその『マインド』が私にあれば、もう少し早く合格できたんじゃないかと思う。そんな私にとっては忘れられない年だった。

きっと、今年の受験生の方は、プレッシャーと不安に加えて、台風の影響で、いつ試験があるのかも分からず(12月8日(日)再試験日決定!)、どんな問題になるのかも読めず、生きた心地がしないと思う。今、多くの受験生の方が、学校のカリキュラムが終了し、再試験までの間どうやって勉強したら良いのか、学校は再試験までのカリキュラムを組んでくれるのか。そんな不安で押しつぶされそうだと思う。

だから、平成26年の製図試験に独学で挑んだ経験は、もしかすると今の受験生の方に少しは役に立つかもしれない。何か少しでもヒントを伝える事ができるかもしれない。そう思いこの文章を書くことにした。

引き続き、平成26年の本土と沖縄の類似点と相違点の整理、このクソ面倒な作業は私がやってみることにするので、この知見、是非、10月試験の研究に役立ててほしい。

その1ブログ

その2ブログ

『設計条件』の比較 その2 建築物

赤文字:本土試験と沖縄試験でどちらかに難易度の差が発生しているもの

青文字(下線):本土試験と沖縄試験でどちらかに作図表現にわずかではあるが手間の差があるもの

青文字:表現の違いはあるが、その違いが難易度の差とまでは言えないもの

緑文字:単体では本土試験と沖縄試験で難易度に差が発生するが、他の部分との関係で難易度が相殺されて差が発生しないもの

平成26年度本土試験沖縄試験
構造、階段等構造自由、地上2階、1棟構造自由、地上2階、1棟
床面積の合計1,800㎡以上、2,200㎡以下1,800㎡以上、2,200㎡以下
床面積算入除外ピロティ、塔屋、バルコニー、屋外階段等は、床面積に算入しないピロティ、塔屋、露天風呂、バルコニー、屋外階段等は、床面積に算入しない
要求室(部門)
  • 休憩・情報部門
  • 店舗・料飲部門
  • 温浴部門
  • 共用・管理部門
  • 休憩・情報部門
  • 店舗・料飲部門
  • 温浴部門
  • 共用・管理部門
休憩・情報部門の要求室
  • 休憩・情報スペース(適宜)
  • 男性用便所(適宜)
  • 女性用便所(適宜)
  • 多機能トイレ(計約12㎡)
  • 休憩・情報スペース(適宜)
  • 男性用便所(適宜)
  • 女性用便所(適宜)
  • 多機能トイレ(計約12㎡)
店舗・料飲部門の要求室
  • 地域特産品売り場(約200㎡)
  • 仕分け室(約50㎡)
  • レストラン(適宜)
  • 物販店舗(A)(約50㎡)
  • 物販店舗(B)(約150㎡)
  • 仕分け室(約50㎡)
  • フードコート(適宜)
  • フードコート厨房(適宜)
温浴部門
  • ロビー(適宜)
  • 浴室(適宜)
  • 休憩室(適宜)
  • リネン室(適宜)
  • ロビー(適宜)
  • 浴室(適宜)
  • 休憩室(適宜)
  • リネン室(適宜)
共用・管理部門
  • エントランスホール(適宜)
  • 多目的室(適宜)
  • 事務室(適宜)
  • 設備スペース(+自家発電設備)(適宜)
  • 従業員控室(適宜)
  • 防災備蓄倉庫(約50㎡)
  • エントランスホール(適宜)
  • 事務室(適宜)
  • 設備スペース(適宜)
  • 従業員控室(適宜)

『構造形式・階数・面積・部門』の共通点と相違点について

『構造形式・階数・面積』については、

  • 構造は自由で階数は同じ
  • 床面積の合計(ターゲット面積)も同じ
  • 要求室の『部門』の種類は同じ

『部門』を構成する『要求室』については、

  • 『休憩・情報部門』では全く同じ、
  • 『店舗・料飲部門』は、本土試験で地域特産品売場1つだったものが、沖縄試験では物販店舗(A)と(B)の2つに分かれた。レストランもフードコートとフードコート厨房の2つに分解されている。とはいえ、実質はほぼ同じ構成であるといえる。
  • 『温浴部門』も全く同じ。
  • 『共用・管理部門』では、本土試験では出題された多目的室と防災備蓄倉庫が、沖縄試験では消え、指定要求室数は減少している

要求室数の数は、沖縄試験では店舗・料飲部門で2つ増えているが、共用・管理部門では要求室が2つ減少し、トータル相殺』していることが読み取れる。出題者が極力問題難易度をそろえるために、ある項目で相違点があったとしても、違う項目でも相違点を設けることで、問題全体として難易度を同じにしようとしている苦労が伺える。

『要求室の特記事項』の共通点と相違点について

次に要求室の特記の違いについて見ていく。

赤文字:本土試験と沖縄試験でどちらかに難易度の差が発生しているもの

青文字(下線):本土試験と沖縄試験でどちらかに作図表現にわずかではあるが手間の差があるもの

青文字:表現の違いはあるが、その違いが難易度の差とまでは言えないもの

緑文字:単体では本土試験と沖縄試験で難易度に差が発生するが、他の部分との関係で難易度が相殺されて差が発生しないもの

平成26年本土試験沖縄試験
全部門共通特記
  • 休憩・情報部門については、24時間利用できるように計画する。
  • 吹抜けを適切な場所井まとまったスペースで80㎡以上設け、その吹抜け部分は梁を設けない構造計画とする。
  • 「休憩・情報部門の各室」及び「店舗・料飲部門の物販店舗(A)」については、24時間利用できるように計画する。
  • 吹抜けを適切な場所にまとまったスペースで80㎡以上設け、その吹抜け部分は梁を設けない構造計画とする。
休憩・情報スペースの特記事項
  • 30人程度が利用できるようにする
  • テーブル、椅子等を設ける
  • 授乳室及びキッズコーナーを設ける
  • 自動販売機コーナーを設ける
  • 公衆電話コーナーを設ける
  • 交通情報、観光情報等を提供する情報パネルを設ける
  • 観光案内のためのカウンターを設ける
  • 床面積:適宜
  • 40人程度が利用できるようにする 
  • テーブル、椅子等を設ける
  • 授乳室を設ける
  • 自動販売機コーナーを設ける
  • 公衆電話コーナーを設ける
  • 交通情報、観光情報等を提供する情報パネルを設ける
  • 観光案内のためのカウンターを設ける
  • 床面積:適宜
男性用便所大便器を5器、小便器を10器大便器を6器、小便器を13器
女性用便所大便器を13器大便器を15器
多機能便所2室(約6㎡/1室)2室(約6㎡/1室)
地域特産品売場陳列棚及びレジカウンターを設ける
物販店舗(A)

  • 食料品及び日用品を販売する
  • 陳列棚及びレジカウンターを設ける
物販店舗(B)
  • 地域の特産品を販売する
  • 陳列棚及びレジカウンターを設ける
仕分け室地域特産品売り場用とし、冷蔵庫、食品加工室、倉庫を設ける
  • 物販店舗(A)(B)用とする
  • 冷蔵庫、倉庫を設ける

レストラン(本土)

フードコート(沖縄)

  • 屋内で50人程度が利用できるようにする
  • 屋外テラスと一体的に利用できるようにする
  • テーブル椅子等を設ける
  • 厨房を設ける
  • 眺望に配慮する
  • 80人程度がセルフサービスで利用できるようにする
  • 券売機を設ける
  • テーブル、椅子等を設ける
  • 自然通風に配慮する

厨房(本土)

フードコート厨房(沖縄)

厨房の特記無し
  • 麺類、丼物等、ファーストフードを提供する
  • 配膳カウンターを3か所設ける
  • 食器等の返却コーナーを1か所設ける
  • 倉庫及び従業員の休憩スペースを設ける
ロビー
  • 受付カウンターを設ける
  • 下足箱を設ける
  • 自動販売機を設ける
  • 受付カウンターを設ける
  • 下足箱を設ける
浴室
  • 男性用、女性用として、それぞれ15人程度が同時に利用できるようにする
  • 脱衣室に洗面コーナーを設ける
  • 自然採光及び自然通風に配慮する
  • 内風呂及び露天風呂を設ける
  • 男性用、女性用として、それぞれ15人程度が同時に利用できるようにする。
  • 脱衣室に洗面コーナーを設ける
  • 眺望に配慮する
休憩室
  • 和室とする
  • 30人程度が利用できるようにする
  • 眺望に配慮する
  • 洋室とする
  • 20人程度が利用できるように、リクライニングチェアを設ける
  • 自動販売機を設ける
  • 眺望に配慮する
リネン室  
エントランスホール風除室を設ける
  • 風除室を設ける
  • 地域の工芸家の作品を展示するショーケース(1m×6m)を設ける
多目的室
  • 地域住民のイベント、会議、セミナー、ワークショップ等に利用する
  • 20人程度が利用できるようにする
事務室4人分の事務スペースを確保する4人分の事務スペースを確保する
設備スペース
  • 採用した設備計画応じて、設備機械室(空調、給排水、電気、消火等)、屋外機器置場等を計画する。
  • 非常用の自家発電設備を設ける
採用した設備計画に応じて、設備機械室、屋外機器置場等を計画する
従業員控室
  • 男性用、女性用として、それぞれ各1室設ける
  • ロッカーを設ける
  • 男性用、女性用として、それぞれ各1室設ける
  • ロッカーを設ける
防災備蓄倉庫外部からの利用に配慮する
共通補足特記
  • 休憩・情報部門以外の便所及び倉庫については、適切に計画する。
  • その他必要と思われる室等は、適宜計画するものとする
  • 休憩・情報部門以外の便所及び倉庫については、適切に計画する。
  • その他必要と思われる室等は、適宜計画するものとする
    ここまでで大きく変わったものは下記の8つ
  1. 沖縄試験では、全部門共通特記で24時間利用範囲が拡張
  2. 休憩・情報スペースの特記事項
  3. 男性用便所、女性用便所の数
  4. 仕分け室の特記、食品加工室の指定
  5. レスラン(本土)、フードコート(沖縄)の特記、利用人数・規模指定
  6. フードコート厨房(沖縄)の細かい特記
  7. 浴室の特記
  8. 休憩室の特記

全部門共通特記で24時間利用範囲が拡張

沖縄試験では、24時間利用範囲が休憩・情報部門だけではなく、部門を跨いで、店舗・料飲部門の物販店舗(A)まで拡張している。これは、部門のゾーニングと動線計画に影響を与える。沖縄試験では難易度が上がっているといえる。

休憩・情報スペースの特記

休憩・情報スペースの利用人数は、本土30人程度、沖縄40人程度である。一方、キッズコーナーが沖縄試験では消えている。必要スペースの大きさはトータルでは変わらないように上手く難易度が『相殺』されている。

男性用便所、女性用便所の数

沖縄試験では、男性用便所、女性用便所の数が増える。

 本土試験沖縄試験
男性用便所大便器を5器、小便器を10器大便器を6器、小便器を13器
女性用便所大便器を13器大便器を15器

スパン長の設定によっては、このわずかな増加も、使い勝手に影響を与える配置計画になってしまうため、スタディが必要な分、少し沖縄試験が不利であった。

仕分け室の特記、食品加工室の指定

沖縄試験では、仕分け室の特記事項、食品加工室の指定が消えている。室の中の室という、ちょっと分かりずらい表現の特記は、沖縄試験では改善され出題されなかった。

レストランとフードコートの特記、利用人数・規模指定

レスラン(本土)の屋内50人程度、フードコート(沖縄)では80人程度の特記指定であった。一見、フードコートの利用者人数が多く必要面積が大きくなり、難易度が上がりそうであるが、屋外テラスも含めるとほぼ同じボリュームとなる。但し、面積の階振り分けで2階にレストラン(フードコート)を設定した場合のみ同難易度となる

フードコート厨房(沖縄)の細かい特記

フードコート厨房(沖縄)には『配膳カウンターを3か所設ける』『食器等の返却コーナーを1か所設ける』『倉庫及び従業員の休憩スペースを設ける』という細かい条件が指定されている。これは、なかなか曲者の特記事項の指定であった。これを動線計画と矛盾なく整理する必要があるため、沖縄試験が難易度が高かった。

浴室の特記

本土試験が『自然採光及び自然通風に配慮』であったが、沖縄試験では『眺望に配慮』に代わる。『自然採光及び自然通風に配慮』なら浴室に開口があれば問題ないが、『眺望に配慮』では配置する際に方角も重要となる。沖縄試験がやはり難易度が上がる。

休憩室の特記

休憩室の特記事項として、本土では『和室30人程度』であったが、沖縄では『洋室20人程度のリクライニングチェア設置』となる。これは、一見、沖縄での規模が減っているので難易度が下がった感じはするが、リクライニングを描いてみると、結果、和室の30人と同規模となる。難易度はさほど差は無い。

『要求室の特記事項』のまとめ

要求室の特記事項を整理していくと、『相殺』して難易度が同じになるようにしている所も多く見受けられるが、やはり沖縄試験が難易度が高いと言える。

問題の難易度に影響を与えているのが5項目確認された。内1項目は本土試験の際、分かりずらかった表現の改善とみられ、都合4項目が沖縄問題の難易度を上げている

  1. 沖縄試験では、24時間利用範囲が休憩・情報部門だけではなく、部門を跨いで、店舗・料飲部門の物販店舗(A)まで拡張
  2. 男性用便所、女性用便所の数がわずかだが沖縄試験で増加
  3. フードコート厨房(沖縄)には『配膳カウンターを3か所設ける』『食器等の返却コーナーを1か所設ける』『倉庫及び従業員の休憩スペースを設ける』という細かい条件が指定
  4. 浴室の特記が、沖縄試験では『眺望に配慮』に代わる。

 

『設計条件』の比較 その3 その他の施設

平成26年度本土試験沖縄試験
屋外テラス
  • 地上又は1階の屋上に、まとまったスペースで50㎡以上設ける
  • レストランと一体的に利用できるようにする
  • テーブル、椅子等を設ける
屋外販売スペース

  • 地域の特産品の販売
  • まとまったスペースで50㎡以上
駐車場地上に平面駐車とし、車椅子使用者用として2台分、サービス用として2台分地上に平面駐車とし、車椅子使用者用として2台分、サービス用として2台分
屋外休憩スペース地上に50㎡以上設ける
床面積不算入「その他の施設等」は、床面積に算入しない「その他の施設等」は、床面積に算入しない

その他の施設については、レストラン(本土)との一体利用である屋外テラスは、2階に振り分ければ、建物全体の中で、フードコート(沖縄)と同規模と考えることができるため、難易度としては差がうまれない。また、屋外販売スペース(沖縄)と屋外休憩スペース(本土)が対の関係となっており、付属する要求室の関係は変わるものの、これも難易度に違いは無いだろう。

まとめ

以上のことから建築物の構造形式・階数・面積・部門・その他の施設においては、ほぼ同難易度であった。

一方、要求室の特記事項において4項目において沖縄試験で難易度の上昇がみられる。

  1. 沖縄試験では、24時間利用範囲が休憩・情報部門だけではなく、部門を跨いで、店舗・料飲部門の物販店舗(A)まで拡張
  2. 男性用便所、女性用便所の数がわずかだが沖縄試験で増加
  3. フードコート厨房(沖縄)には『配膳カウンターを3か所設ける』『食器等の返却コーナーを1か所設ける』『倉庫及び従業員の休憩スペースを設ける』という細かい条件が指定
  4. 浴室の特記が、沖縄試験では『眺望に配慮』に代わる。

私自身もまとめながら発見があるが、当時沖縄試験の難易度が大幅に上がっていいたという見方があった。しかしながら、ここまで1つ1つ整理してみると、確かに難易度は上がっているものの、ベースが同じなので劇的というほどの難易度の差は無い事が分かる。

引き続き『計画に当たっての留意事項』『要求図書』についてまとめていくので、それら知見を参考に令和元年10月試験問題の研究を進めてほしい。

つづく

 

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